『ラジエーションハウスⅡ』最終章の内容を下記に示します。
フジテレビ ラジエーションハウスⅡ オフィシャルサイトより
八島智人さん演じる田中福男は、小心者で見栄っ張りな男性です。いろいろな仕事についても長続きしない中年男性です。そんな男性が、診療放射線技師となって頑張る話です。
もう一方で石井正則さん演じる山田福蔵が現れ、名前に同じ『福』が付くことで田中さんと山田さんが意気投合する。この二人は、名前に福が付く事と同様に境遇と性格も似ています。
こんな二人の今後の仕事についてドラマは進んでいきます。診療放射線技師である私は、医療メーカ社員である山田福蔵の仕事に対するモチベーションや行動には多くの共感する部分もありました。
医療機器メーカーや薬剤メーカーに依頼して文献をもらうことがありました。ドラマのように研究者の自宅まで出向いて文献を頂く事はありませんが、興味深く見ることが出来ました。そんなドラマでしたが、今回の『ラジエーションハウスⅡ』最終章で少し残念なところもありました。
ドラマの中では、この点には触れていませんでしたが、診療放射線技師の免許は国家試験合格して得られるものであり、国家試験を受ける条件として、3年~4年の養成所(専門学校)又は4年生大学を卒業して、国家試験を受ける資格が得られます。ドラマの中では、余りにも簡単に入学して簡単に国家試験に合格したように感じた。
診療放射線技師を目指すには
ドラマでは全くこの部分には触れることなく、技師になっていましたが、実際のところはどうなのか?診療放射線技師の現状について報告します。
外国の診療放射線技師免許を持っている者や以前の診療エックス線技師免許を持っている者が、診療放射線技師として日本の地で働く場合、日本の国家試験資格を取得する必要があります。
今回は新規で国家試験を目指す人向けに記載します。
学校教育法第90条第1項の規定により大学に入学することができる者であって、文部科学大臣が指定した学校又は都道府県知事が指定した診療放射線技師養成所において、3年以上診療放射線技師として必要な知識及び技能の修習を終えた者
となっていますが、簡単に言うと高校卒業又は高校卒業と同等の学校教育を終了した者が、大学や養成所で3年以上勉強した者が国家試験を受ける資格がある。
診療放射線技師養成大学、専門学校の現状
それでは日本全国に診療放射線技師を養成する学校や大学がどれだけあるのでしょうか?
全国には、48程度の養成施設があり、70%が大学です。残り30%が専門学校です。私が技師になった頃は、4年制大学はありませんでした。最初の4年制大学は藤田保健衛生大学(現在の藤田医科大学)で昭和62年4月に開校しました。現在では国立大学(10大学以上)にも診療放射線技師学科がある。
以前と違い診療放射線技師の仕事も多岐に渡り、必要なカリキュラムを3年間では消化できないため、4年生大学が必要となり増加したのではないでしょうか?今後も4年生大学は今後増加していくと考えられます。
それでは実際に難易度はどうでしょうか。国公立大学が15施設もあり難易度は高くなってきています。
- 名古屋大学 医学部 保健-検査技術科学の偏差値は、 55.0 です。
- 北海道大学 医学部 保健-放射線技術科学の偏差値は、 55.0 です。
- 北里大学 医療衛生学部 医療工-診療放射線技術科学の偏差値は、 50.0 です。
上記に例として挙げた偏差値は高いほうです。これ以外に低い施設はいっぱいあります。専門学校であれば入学は易しいのですが、入学してからの勉強を頑張らないと国家試験に受かりません。
先輩技師からの一言
私が技師になった頃は専門学校卒業生ばかりで、専門学校卒業でも問題はなかったが、大学生が70%となると、専門学校卒業生の人事に問題が生じる可能性がある。
能力のある専門学校卒業生が、上に上がっていけなかったり、大幅に給与が少なくなるなど不利な状況になる恐れがある。
技師を募集する施設は多く、就職はまだまだ可能だが、大学病院や国公立病などの大規模や中規模施設への就職数は限りがあるため、専門学校卒業生の大きな施設への就職は難しい。それは、就職活動において大学卒業生を求める施設が多いことによる。
専門学校卒業であれば、第1種放射線取扱主任者や放射線治療専門技師、作業環境測定士など自分に付加価値を付ける努力をして貰いたい。その資格を持って就職活動に臨んでほしい。大きな施設では上記の資格を持った技師を求めている。
診療放射線技師の過去から未来へ 1
診療放射線技師のはじまりは、医師の助手からスタートです。病院でエックス線装置を使用するようになり、お医者さんの助手として写真の現像や撮影助手をしていた。
以前は、診療科が独自のエックス線室と暗室を持ち、独自に運営していた。その後現在のように中央化され、エックス線撮影が必要な患者さんは、所定の場所(放射線科)で撮影されるようになり、整備費用も抑えられ、撮影技術も向上した。
その後、エックス線を扱う者に対して国家試験が導入された。エックス線は医療での使用は有益で医療にはなくてはならない存在だが、照射過多による悪影響も解ってきた。よって正しい扱いが出来る診療エックス線技師の養成が急務となった。
1951年に診療エックス線技師法が制定され、1968年に診療放射線技師法が制定された。
以前の技師の仕事と言えばエックス線撮影とフィルム現像が主な仕事で、診療エックス線技師といえば、白衣を着て仕事はしていたが、白衣は現像液で汚れてるイメージがあった。
昭和40年頃より自動現像機が導入され現像えきで汚れているイメージはなくなった。同時に我々技師の仕事もエックス線撮影に専念できるようになった。
また、放射線を利用したアイソトープ検査が、1960年ころから多くの施設で行われるようになり、放射線治療もこの頃から行われるようになる。大学病院や研究機関では以前から放射線治療は行われていたが、大学病院以外でもこの頃から治療が受けられるようになった。
1975年(昭和50年)にX線CTが日本に初めて導入された。頭部CT検査で1スライスの撮影に要した時間は4分ほどで画像も悪く現在とは比較にならない程度の粗い画像でした。
だが、頭の中を画像として観察できることで多くの先生方からは重宝された画期的な検査方法となった。
その後腹部CT装置が東芝から発売になり多くの施設で導入された。
X線CT導入当時の思いで
CT稼働以前に撮影される画像は、平面写真(胸やお腹の一般的な写真)で骨折やガス像の変化を観察して診断していたので、輪切り画像を眼にすることが少なかった。
そのため、放射線科以外の先生方は、正常なCT画像か病気のCT画像かの判断が難しく苦労したと聞いたことがある。ベテランの先生でもCT装置導入により読影の勉強をくり返したそうです。
診療放射線技師の過去から未来へ 2
現在の装置は、数秒間で全身を撮影でき、以前のような輪切り画像だけでなく、コンピュータを駆使して横切り、縦切りなどさまざまな方向からの画像を得ることが出来る。
検査時間は短く、画像は鮮明、微細な病変も見逃さない画像が撮影できるようになった。
この発展により診療放射線技師の業務もCT撮影だけでなく、その画像データを利用した画像再構成や3D画像作成が追加され、幅広い分野の知識が必要となった。
その後MR装置も開発され、診療放射線技師がメインで検査を担当するようになった。以前のMR装置は0.5T(テスラ)装置が多く、現在では、3T装置も稼働している。
2010年には、診療放射線技師の仕事として画像診断による読影の補助や放射線検査の説明や被ばく相談などの役割が追加され、2014年には診療放射線技師法が改正され業務が拡大した。
このように放射線検査の日進月歩により、幅広い知識が必要となり4年制大学での教育が必要となってきている。
これから求められる技師
ここでは、触れなかったが、診療放射線技師は、放射線施設の管理や放射線被ばくの管理、放射性同位元素の管理などの重要な業務も担当している。
また管理の必要性から放射性取扱主任者や放射線に関する作業環境測定士などの国家試験免許も必要となり多くの診療放射線技師が、挑戦している。中には大学時代に取得する学生も多くなってきている。
また各分野で専門技師認定制度を行っている。その認定は、技術獲得の証であり、患者さんにも還元できることなのでぜひ獲得してほしい。
放射線治療専門放射線技師認定制度、X線CT認定技師、磁気共鳴(MR)専門技術者認定などがある。
最後に
マイナーな職業である診療放射線技師に焦点を当てたドラマ『ラジエーションハウスⅡ』最終章で八島さん演じる田中福男さんは、小心者で見栄っ張りな中年男性です。そんな人が診療放射線技師となって活躍する話です。
そんな診療放射線技師を目指す人のために、診療放射線技師になるための方法と技師や検査の歴史を報告した。
診療放射線技師を目指す人には、4年生の大学への入学をお勧めするが、専門学校生には自分に付加価値を付けることをお勧めする。