小学生にもわかるように放射線・放射性物質の説明をします。
原子の構造
すべての物質は原子によって出来ています。その原子の中央には原子核があり、まわりを電子がまわっています。世界中にある多くの物質は安定状態にありますが、一部不安定な状態にあるものを放射性物質といいます。
『放射性物質』『放射性核種』『放射性同位体』『放射性同位元素』『Radio Isotope』『RI』『ラジオ アイソトープ』これらすべて同じ物を表しています。
原子の電子配置は内側から2個、8個、18個、32個の電子が並んでいます。
公式は2n2です。nには内側からの殻数を入れることによって電子の入る個数がわかります。例えば、N殻は4番目ですから 2×4×4は32個となります。
それでは、個別に説明します。
『放射線』とは
放射線には、エックス線やガンマ線、アルファ線、ベータ線、中性子線などがあります。エックス線やガンマ線と同じ電磁波には、電波、赤外線、可視光線、紫外線がありますが、は放射線ではありません。
一般的に電離放射線を放射線といいます。赤外線、可視光線、紫外線は非電離放射線ですが非電離放射線とはあまりいいません。電離とは、正電荷のイオンと負電荷のイオンに分離する能力をいいます。
- 『アルファ(α)線』とは、ヘリウムの原子核と同じで、陽子2個と中性子2個で出来ています。原子核から分かれて飛び出したHeです。
- 『ベータ(β)線』は原子核内から飛び出した電子です。
- 『中性子線』は原子核内から飛び出した中性子です
- 『ガンマ線(γ)』は原子核内から発生した電磁波です。
- 『エックス(X)線』は原子核外から発生した電磁波です。
エックス線は、原子核外からの電磁波です。
①は連続エックス線です。熱電子が原子核の近くを通ると原子核内のプラス電極に引っ張られ、方向が曲げられ、スピードが落ちます。その減速エネルギーがエックス線として、放出されます。
②は特性エックス線です。熱電子が電子を追い出して、順位の高い外側より電子が入り込み余分なエネルギーを特性エックス線(固有エックス線)として放出します。
③はガンマ線です。原子核内から発生する電磁波です。
放射性とは
陽子の数に対して中性子の数が多すぎたりすると中性子を放出して安定な状態になろうとします。その不安定な状態を放射性と呼びます。
安定な状態とは
原子核内の陽子と中性子のバランスが取れた状態です。安定同位体とは、放射線を出さない半永久的に変化をしない元素を言います。
放射性物質の説明をする場合、核種の記載方法を説明する必要があります。
放射性物質の記載の仕方
下記の元素はテクネシウム(テクネチウム)という元素を例に記載します。
原子記号とは、原子の種類を表す記号です。例ではTcです。
原子番号とは原子核の中にある陽子の個数です。原子記号の左下に書きます。
質量数とは、原子核の中にある中性子数と陽子数を足したものをいいます。テクネチウムは99です。陽子数が43個で中性子の数は56個です。
隣にmと書いていますがこれは核異性体と言います。
中性子数+陽子数(原子番号)=質量数
『放射性物質』とは
放射線を放出する物質のことをいいます。多くの金属は安定していて、放射線を出しませんが、放射性物質は、不安定な状態である金属は放射線を出して安定状態になります。
『放射性核種』とは
核種とは、原子の中心にある原子核(中性子数と陽子数)の種類のことをいいます。安定核種と放射線核種があります。
『放射性同位体』とは
同位体とは、原子番号(陽子数)が同じで質量数が異なる即ち中性子の数が異なる元素をいいます。
同重体とは、質量数が同じですが陽子数(原子番号)が異なる原子をいいます。
同中性子体とは、中性子数が同じであり陽子数(原子番号)が異なるものをいいます。同調体ともいいます。
放射性同位元素とは
放射性同位体と同じ意味です。『元素』に対して同位元素、『体』に対して同位体です。
『RI』とは、『Radio Isotope』『ラジオ アイソトープ』全て同じです。
核異性体とは
テクネチウム99mの場合、99の隣のmは核異性体を現します、一番エネルギーの低い状態より少しエネルギーを持っていて少し不安定な状態にいます。
言い換えれば準安定状態のことを言います。そこからガンマ線を放出して安定な状態に戻ることを核異性体転移と言います。『m』はmetastableの略称で準安定状態と言う意味です。
壊変・崩壊とは
崩壊と壊変は同じことを表しています。崩壊・壊変とは、不安定な状態にある放射性同位元素が安定な状態に変わることを言います。
安定な状態と言いましたが、最後は安定な同位元素になります。多くは崩壊(壊変)して違う放射性同位元素になり、また崩壊を繰り返します。大多数の放射性物質は崩壊を繰り返して安定な元素へと向かいますが、この一連の崩壊の順番を崩壊系列や放射線系列と言います。
下記にアルファ線、β線(β+、β-)、中性子線放出式を示す。
- アルファ崩壊:ウラン238がヘリウム4(アルファ線)を放出してトリウム234になる現象
- ベータマイナス崩壊:炭素14がβ-線を放出して窒素14になる現象
- ベータプラス崩壊:陽子が陽電子(ベータ粒子)を放出して中性子になる現象
- ベリリウムにアルファ線を照射すると中性子を放出して炭素12になる
崩壊図
Zという架空の元素の崩壊図です。右側の線は原子番号や質量数が減少を現し、左側は原子番号が増えます。真下への直線は数量の変化はありません。
この崩壊の種類にはアルファ(α)崩壊、ベータ(β)崩壊、ガンマ(γ)崩壊など7種類があります。アルファ壊変、ベータマイナス壊変、べータプラス壊変、ガンマ壊変、核異性体転移、軌道電子捕獲、内部転換があります。(ベータプラス壊変と軌道電子捕獲(EC)を同一のものとしてまとめることもあります)
半減期とは
放射性同位元素が、放射性崩壊(壊変)をして、その量が半分の量になるまでかかる時間を半減期といいます。短い半減期のものは、1秒以下のものから何百億年以上のものまで存在します。
上記のように放射性物質が崩壊して放射性同位元素の放射能が半減する時間を半減期(1T)といいます。4分の1になるまでの時間を2T、8分の1になるまでの時間を3T、16分の1になるまでの時間を4Tといいます。(半減期はTと現します)
半減期には、一瞬のものからビックリするほど長い半減期があります。
最短の半減期を持っているのが、H-7(七重水素)で23×10-24秒です。
反対に一番長い半減期を持っているのがTe-128(テルル-128)です。半減期は2.2×1024年です。
この数字では、実感できないため、2.2×1兆×1兆年です。数字で表すと2,200,000,000,000,000,000,000,000年です。ため息も出ない数字ですね。あまりにも半減期が長いため以前は、安定元素と間違われました。
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放射線の専門家(診療放射線技師、第一種放射線取扱主任者、作業環境測定士)として放射線関係の記事(医療を含む)の投稿とブログ(サーバー取得、WP、JINなどの設定)を初心者の私が備忘録として今から始める超初心者(特に定年を迎えた方)に伝えたい。