X線CT検査について説明します。
ヒバクとは、日本語で、【被爆、被曝、被ばく】の3種類を使います。
最初の被爆は、原爆の被爆です。2番目の被曝の曝はさらされると言うことから被曝を意図としていないため事故による被曝時に使います。
X線CT検査とは
現在のX線CT装置は、マルチスライスCT装置が全盛期で、320列マルチスライスを筆頭に128列や64列などがあります。
短時間撮影が出来るだけでなく高精細画像が得られます。X線管球の開発とCPUの性能アップによって実現できた環境です。
全身のあらゆる部位に対応しています。短時間で全身の撮影が出来るため、交通事故での全身の骨折などの異常も素早く見つることができます。
造影検査では大動脈(胸部血管、腹部血管、骨盤部の血管)が一度のスキャン(ヘリカルスキャン)で可能となりました。(造影剤の濃度が高くて均一な画像が得られます)
アイソトロピック画像とは?
最新装置では、極薄画像撮影技術とCPUの性能により、3D画像や縦切り画像・横切り画像、任意のオブリーク(斜め切り)画像の再構成が簡便にできるようになりました。(以下に説明文を加えます)
アイソトロピック画像が撮影できるため、高精細3D画像を作ることができます。3軸とも薄いスライスとなっています。
よって輪切り画像も再構成による縦切り画像、横切り画像もオブリーク画像も同等の高精細となります。
アイソトロピック画像とは、画像が構成されているX軸、Y軸、ℤ軸の3軸に対して等分になっていることを言います。
画像の最小単位であるボクセルで縦・横・高さ(X軸、Y軸、Z軸)が同じ幅になる3D画像(アイソトロピック画像)作成が可能となり短時間で検査が終わるため、縦・横・高さに時間を加えた4D検査が出来るようになりました。
X線CT検査における注意事項
放射線を使った検査になりますので妊娠をされている方や妊娠の可能性がある方は、基本的に検査を受けないほうが良いと思います。
以前と違って放射線を使用していないエコー検査やMR検査などX線CT装置に代わる検査が多くありますので、主治医の先生と相談してからにしましょう。
それでも、X線CT検査を受ける必要がある場合は、下腹部や胎児が被ばくしないように、プロテクターでのカバー(遮蔽)をお願いしましょう。
X線CT検査とMRI検査の比較
X線CT検査は緊急時に威力を発揮します。特に脳出血では、出血が始まってすぐ画像に現れます。
MRのように金属チェックもいりません。頭部の検査では、一般撮影より先に使用されることがあります。
最新のX線CT装置では、心臓に関する検査もできるようになりました。
冠動脈の流れや微細な石灰化も簡単に見つけることができます。
MR検査は、心臓の拍動に弱く、石灰化は信号を出さないため画像に写りません。
X線CT検査では、単純CT検査であれば、30秒程度で全身が撮影できます。
MRでは検査装置の機構上全身撮影は出来ませんがCTは可能です。
初期脳梗塞の発症を疑われる時以外は、X線CT検査が緊急時の最初の検査となります。
CT colonography ご存じでしょうか?
大腸内視鏡検査と同じ検査がX線CT装置で出来るようになりました。従来の内視鏡検査とは違い、太い管を入れる必要もありません。すなわち、あの痛みもありません。
特に腸に狭窄があって、大腸検査を受けたくても受けられなかった方には、朗報です!検査の手順をお示しします。前処置は従来の内視鏡検査と同じです。
CT大腸検査は、大腸に肛門から炭酸ガスを入れ、仰向けで1回、うつ伏せで1回の計2回の十数秒間息を止めて頂くだけで全て終わりです。
入れた炭酸ガスは自然に吸収されます。言い換えれば、炭酸ガスを入れて膨らんだお腹(大腸)のCT撮影を行うだけです。
後は専用ワークステーション(コンピューター)で画像解析を行い、読影の先生が画像診断するだけです。
先程の仰向けとうつ伏せと2回撮影をする理由は、ガスの移動(ガスは上部に集まりますので仰向けとうつ伏せで撮ること)により大腸全体を診ることです。
もう一つ便などが残っていて、腫瘍と見間違えないように体の向きを変えて検査をするためです。(便などの異物でありば、体位変換により位置が変わります)
検査での痛みがなく検査時間も短いなど、良いことずくめですが、デメリットも有ります。
デメリットとメリット
検査でポリープが見つかっても内視鏡検査のようにその場で採取することは出来ません。
大腸の色を見ることができないため、平らな腫瘍が見つけづらいことが難点です(平らな腫瘍の発生は低い)。
良い点としては、立体的に撮影できますので、ポリープや腫瘍の正確な大きさや場所が判ります。
またお腹のCT検査を受けたことと同じですから、大腸以外の臓器の状態も観察できます。
施設によっては、事前に造影剤を飲んで便に標識を着けて、腫瘍と区別する検査方法を取り入れてるところもあります。(タギング法)
X線CT装置の歴史
CT装置の世代の分け方は製作された年代別に決められていますが、新しい世代が良いとばかりは言えません。考え方は良くても製造に難があったり、高価すぎて採算が撮れないものがあります。
第1世代CT装置
1968年に英国EMI社ハンスフィールドさんによりX線CT装置が開発されました。下記装置が第一世代CT装置です。線ビームで矢印方向へ移動しながら照射しデータ収集します。
次に角度を変えて頭部の周囲を一周します。(最初に開発された装置は頭部専用装置でした)X線発生装置は固定した陽極で、1スライス作るのに5分程度かかりました。
過去の画像を見る機会がありましたが、頭部内の状態が全く分からない状態(CTがない時代)から考えればすごい画像と思いますが、脳出血が右のこの辺りにあるとわかるくらいの画像で細かなところはわかりません。
X線CT装置のスキャン方式の変遷より引用
第2世代CT装置
下記CT装置は細いビームで回転して、データ収集を行います。検出器の数は数十個で、1スライス撮影するのに20-30秒程度必要です。第二世代でも世代前半の装置では2分程度時間がかかりました。
(CPUの性能が悪く時間が必要)X線発生装置は固定陽極で画像の鮮明度は大変良くなっています。
X線CT装置のスキャン方式の変遷より引用
第3世代CT装置
この世代のX線CT装置が現在使用されている装置と同じ世代です。X線管球と検出器が同時に回転移動するX線CT装置です。
照射範囲が被写体を全てカバーするワイドファンビームを採用しています。今回から回転陽極が採用され固定陽極では実現できなかった長い時間の使用が可能となりました。
第三世代中期よりスリップリング方式を採用しヘリカルスキャンが可能となりました。
従来の装置は、高圧ケーブルとX線管球とがつながっているため同じ方向への回転ができないため、回転方向を反対にしてケーブルのねじれを解消していました。
スリップリングは画期的な装置でありますが、スリップリング方式には低圧スリップリング方式と高圧スリップリンク方式があり、方式の良し悪しについて議論されました。
固定陽極と回転陽極
X線発生装置には、電子を飛ばす陰極と電子を受けてX線を発生させる陽極(焦点)があります。
初期のX線管球の焦点は、陽極の中心にタングステンをはめ込み固定式で使用していましたが、使用頻度が多くなると焦点の温度上昇で焦点の劣化が激しくなりました。
それを抑えるために、陽極側を独楽のように回転させ焦点を円形にして同じところに電子が当たらないように工夫しました。これが回転陽極です。
また高い陽極蓄積熱容量と高い冷却効率により長時間の使用が可能となりました。
ヘリカルスキャンとは
ヘリカルスキャンとは、回転する間にベッドを移動させて、らせん状に撮影することを可能にした技術です。
スリップリング方式以前のX線CT装置でも輪切り画像は鮮鋭度の高い画像が撮れましたが、画像再構成によって縦に切った(縦切り)画像や横に切った(横切り)画像を作る際、どうしても鮮鋭度が悪く直線もガタガタしていました。
スライス厚を極力薄くすることで再構成とは見えないほど鮮明な画像が得られるようになりました。時間分解能(時間を加味した画像)も高く診断し易い画像が得られます。
X線CT装置のスキャン方式の変遷より引用
第4世代CT装置
被写体を囲む360度全体に検出器を配列し固定した装置です。X線管球をその内側に配置し、被写体の周りをぐる—っと回転させデータを収集します。
そのX線管球の照射幅は扇上のワイドビームで、撮影する被写体をすっぽり覆っています。検出器が大幅に増えるため高価になります。考え方はよいのですが、普及はしておりません。
X線CT装置のスキャン方式の変遷より引用
第4世代X線CT装置には、もう1種類あります。被写体を囲む360度全体に検出器が配列され固定されていますが、こちらは検出器の外側に管球を配置しています。
X線管球の回転と検出器の傾きを同期させX線管球部分が通過する際、検出器側を傾ける装置です。検出器にX線が当たらないように検出器側を傾ける装置です。
X線管球のワイドビーム幅は減りますが、管球と検出器の距離が長くなるためX線管球にかかる負荷が増えて、装置も複雑になり現在も普及していません。
X線CT装置のスキャン方式の変遷より引用
第5世代CT装置
特徴は、電子ビーム偏向型で撮影時間は超短時間ですが普及はしておりません。
X線CTにおける線量評価と被ばく線量
放射線被ばくの評価は、実効線量や等価線量当量などいろいろな言葉が出てきますが、CT検査の線量評価の仕方では多くの評価方法があります。
CTDI、CTDAFDA、CTDI100C、CTDIW、CTDVOL、DLPなどがあります。
CTDI法は専用の線量計とファントムを用いて測定します。そのほかの測定方法はこのCTDIを基本としています。
CTDIは、専用のファントムを1cmの厚みで1回転した時の中心部の線量のことと定義しています。
この計測方法を放射線被ばくに取り入れたため、様々な考え方が出てきています。
実際の検査による被ばく線量とは検査全体で考えますが、1回転での線量(CTDI)、測定範囲を10Cm(CTDI100C)、測定点を中心1点だけでなく5か所を測定した(CTDIW)、ヘリカルCTの撮影に合わせた測定方法(CTDVOL)、撮影範囲を付加した線量測定方法(DLP)などがなります。
DLPはDose Length Productと書きます。CTDIVOLは結果に距離分の長さを掛けたものです。
上記のそれぞれの数値(測定方法による線量)がCT検査の被ばく線量として独り歩きをしています。
X線CT検査の被ばくに対してメディアや新聞では1口と言いますが、示される値は3mSv~70mSv 位まで大きな幅があります。
この値は20倍以上も差がありますが、どれも間違いではありません。
1スライスの被ばく線量であったり10㎝の被ばく線量であったりなど設定が無く、X線CT装置の被ばく線量と言う一括りの被ばく線量となるためです。
CT検査や放射線被ばくに関係している人は解っているのですが、一般の人では全く理解できません。1スライスの被ばく線量から全体の被ばく線量まで、多数の結果とそのほかに実効線量という考えが入ってきます。
それではどのくらい被ばくするのでしょうか?緊急時の検査や精密検査など多種多様な検査があります。
以前、実効線量とは局所で被ばくした線量を体全体に均等化するため少なくなりますという話をしましたが、実効線量表示(全身に均等化)しなければ100mSv位被ばくする検査も出てくると思います。
妊婦さんの検査であれば、胎児の影響を考えていますのでこのようなことはありません。あくまでも便益を考えた検査となります。これが被ばく過多になるかどうか議論になります。
最後に
今回の投稿では、造影検査については、省いております。造影や造影剤に関しては医師や薬剤師のジャンルのため記事をとりやめました。
CT検査での被ばくについては、色々な表し方があるため、一概には言えませんが、表し方によって10~100倍の差がでます。
CT検査によっては、100mSvを超えるような被ばくもありますが、病気を見つけ治療するためのやむを得ない検査ばかりです。
CT検査の被ばくに批判的な人は、DLPなど被ばく線量数の多い線量を提示します。反対にCT検査を肯定する人は、実効線量など少ない線量を提示します。
両方とも間違った数字ではありませんが、どの検査でどのような方法で測定(計算)されたかが大切です。その点を良く見極めましょう。