放射線とは?
医療の世界で利用されている放射線、原子力発電で使われる放射線、戦争(原爆)で使用される放射線、日本は原発事故と原爆を経験した唯一の国です。
その日本に生まれ育った人間として、医療(生)と戦争(死)で使われる放射線とは、どんなものなのか?良いことも、悪いことも知るべきです。
今回は、小学生にもわかるように説明したいと思います。
放射線には、いろいろな種類があります。主なものとして『エックス(X)線』『アルファ(α)線』『ベータ(β)線』『ガンマ(γ)線』『中性子線』などがあります。(今回は日本語表記とさせて頂きます)
『エックス線』『ガンマ線』と『電子線』『アルファ線』『ベータ線』『ガンマ線』『中性子線』は別けて説明をします。先ず一番身近なエックス線について説明します。
エックス線やガンマ線は、電磁波の一種です。先ず最初に電磁波の説明をします。
電磁波とは?
結論から言うと、電波と光そしてエックス線、ガンマ線は、全て同じ種類のものです。性質は大きく違いますが、全て電磁波と言う波動です。
電磁波とは、学問では、電場と磁場の変化を伝える波(波動)です。
電波も光もエックス線、ガンマ線もすべて『電磁波(でんじは)』と呼ばれます。電磁波は、空間を伝わる『波』の一種でありながら、小さな『粒(つぶ)』でもあります。そのため光のことを光子とも呼びます。
波と粒の両方の性質を持つ不思議なものです。そのため、多くの科学者(ニュートン~アインシュタイン)は以前から『波か粒』について議論してきました。
波の特徴
回析とは❓️波の伝わる先に障害物があると波が回り込みながら伝わっていく。
干渉とは❓️異なった波を重ね会わせると、大きくなったり、小さくなったりする。
光の粒の特徴
光電効果(光が金属にぶつかると電子が飛び出す)によって粒を証明
光子は振動数に比例するエネルギーをもつ粒子であって、光の強さはその光子の個数の多さに比例する。
上記にあるように、ガンマ線やエックス線、紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波、長波などすべて同じものですべて電磁波です。
波長とは、波(波動)の周期的な長さのことをいいます。周波数と密接な関係があり、周波数と波長は反比例します。周波数は、1秒間に繰り返す波長の数をいいます。
全てが電磁波ですが、波長の長さ(周波数)によって全く違うものと認識されています。
例を短波と長波としていますが、実際の短波と長波ではありません。
短い波長のものをガンマ線やエックス線と言い、波長が長くなるにつれて紫外線⇒可視光線⇒赤外線⇒マイクロ波⇒長波と変化していきます。
電波の種類は、波長の長さによって、「極超長波(ULF)」「超長波(VLF)」「長波(LF)」「中波(MF)」「短波(HF)」「超短波(VHF)」「極超短波(UHF)」「マイクロ波(SHF)」「ミリ波(EHF)」といったように分類されているよ。
子供の無線教室/第5回 「周波数によって変わる、電波の特徴」より
使用される電磁波の利用法いろいろ
僕たちに見えている光は電磁波の中のほんの一部分です。それが『可視光線』と言われるもので、雨上がりに見られる虹の赤色に見えるところは、波長が長く、黄色、青色、むらさき色と順に波長が短くなります。それよりもっと波長が短くなると、紫外線、エックス線、ガンマ線の順となります。
反対に波長が長くなると赤外線、電波となります。こたつなど暖房器具で使われるのが『赤外線』です。
コロナウイルス感染を調べる体温モニターも赤外線を感知する仕組みとなっています。
電子レンジは英語で、マイクロウエブ オーブンといいますが、これはマイクロ波を使っています。
ラジオやテレビ、スマホなどで使われるものが『電波』です。
波長の長い電波は、回り込みにより室内でも電波が届きますが、壁などを透過することはありません。
日焼けサロンや消毒で使われるのが『紫外線』です。太陽光にも多く含まれており、長年紫外線に当たり続けると、プラスチックでもボロボロになります。
病院や診療所での放射線検査で使用されるのが、『ガンマ線やエックス線』です。ガンマ線は、アイソトープ検査で使われ、エックス線は、その他の放射線検査(CT検査や血管撮影、骨密度)に使われます。
工業分野や農業分野でも利用されています。
下記の例は、長波とエックス線を比較したものです。
波のイラストでは大差がないように見えますが、下記の波長の長さを比較すると大きな違いがあります。全く別物に思えます。
長波とエックス線では、周波数や波長の違い以外にエネルギーが大きく違います。
エックス線とは
小学生の君たちも一度はお世話になったことがある放射線がエックス線です。
病気やケガ、検診でレントゲン撮影を行ったことがあると思いますが、昔はレントゲン撮影と言いましたが、今ではエックス線撮影と言います。
ドイツのレントゲン博士が1895年に発見した光は、物をすきとおす不思議(未知)な線と言うことから『X線』と名付けられました。日本語では、エックス線とも表記します。
エックス線やガンマ線には、透過作用があります。エックス線撮影やラジオアイソトープ検査はこの透過作用を利用しています。
エックス線やガンマ線は電離放射線とも呼びます。原子や分子をイオン化(+)イオンと(-)イオンに分ける作用を電離作用と言います。
この電離作用によって大量の放射線は人体に悪影響をもたらします。
エックス線とガンマ線の発生の違い
エックス線とガンマ線は発生の仕方やエネルギーは違いますが性質は同じです。エックス線は人工的につくられますが、ガンマ線は放射性同位元素(ほうしゃせいどういげんそ)から発生する線といってもいいでしょう。
正確には、エックス線は、原子核外から発生しますが、ガンマ線は原子核内から発生します。
エックス線の発生原理
下記画像はエックス線を発生させる装置『エックス線管球』です。エックス線管球に大きな電圧(高電圧)をかけて陰極フィラメントから熱電子を飛ばすとその電子は陽極ターゲットに当たりエックス線を発生します。
陽極とは、プラス極で陰極はマイナス極です。電子はマイナスからプラスに流れます。
図の通りエックス線管球内は陰極と陽極はつながっていませんが、電子が飛びやすいように真空状態になっています。(電流は陽極から陰極に流れるように表しますが、電子は反対に動きます)
ターゲットに当たった電子のエネルギーの1%程度がエックス線として発生します。残りの99%は熱に変わります。ものすごく効率が悪いですよね。
強力なエックス線を発生させるためには、陽極と陰極に高電圧を掛けることによって発生させることが出来ます。(陽極と陰極の間に大きな電位差を付ける事)
医院で手の写真や足の写真を撮ったことがあると思いますが、手足の撮影では、低電圧で撮影できます。
小学生のみんなは以上ですが、もっとくわしく知りたい方は、下記をご覧ください。
エックス線の発生は、ターゲットを拡大した原子レベルの話のため、下記イラストを利用して説明します。
制動エックス線と特性エックス
フィラメントで熱せられた電子がターゲットにぶつかるとエックス線が発生しますが、発生するエックス線は、その現象から、制動エックス線と特性エックス線の2種類です。
制動エックス線が発生する現象を制動放射と言います。特性エックス線が発生する現象には名前がついてません。
制動エックス線はエネルギーが連なっているため連続エックス線ともいい、特性エックス線は文字通りターゲットの種類によりエネルギーが決まってくるため特性エックス線や固有エックス線といいます。
制動エックス線(制動放射)とは?
下記のイラストについて説明します。原子の中心には原子核があり、その周りを電子がまわっています。原子核は、中性子と陽子から出来ています。
高速でターゲット物質に電子⊖がぶつかるとターゲット内で制動放射が起こります。
制動放射とは、①スピードの速い電子⊖が原子核の近くを通ると原子核内にある陽子⊕に引き寄せられてスピードは遅くなり曲げられてしまう現象を言います。
早いスピードの電子が遅いスピードの電子になることで、エネルギーを失うことになります。②そのエネルギーがエックス線として発生します。このエックス線を制動エックス線と言います。
特性エックス線とは?
原子は、中心に中性子と陽子がくっ付いた原子核があり、その周りを電子がまわっている状態です。
内側から外側に向かって何重にもなって電子がまわっている状態で、内側の電子に比べ外側の電子はエネルギーが高く、その外側がもっとエネルギーが高い状態です。
①その内側の電子に外から飛んできた熱電子⊖がぶつかるとぶつけられた電子は原子の外に弾き飛ばされます。
②弾き飛ばされてなくなった場所にその外側にあるエネルギーの高い電子が入り込みます。
⓷入り込んできた電子はエネルギーが高いのでエネルギーを減らして入り込みます。その減らしたエネルギーが特性エックス線として発生します。
電磁波の一種であるエックス線は、電波や可視光線、紫外線と違って、物質を透過します。エックス線の中にも弱いエックス線と強いエックス線があります。
エックス線と特性
エックス線は電波や光と違って、急激に減少(減衰)していきます。距離の2乗に比例して減っていきます。例えば距離が2倍になれば4分の1に減ります。
医療では、胸部撮影などのエックス線検査とがん治療で使用されています。
エックス検査には、一般撮影に始まり、テレビ検査、血管撮影検査、骨密度検査、CT検査などがあります。
エックス線を人体に当てることで、当てるエックス線量にもよりますが、人体に悪影響を与えることがあります。
その悪影響とは、放射線被ばくです。
言い換えれば、がん治療とは、エックス線をがん細胞に当てることによってがん細胞を減少(しめつ)させることが出来ます。
まとめ
エックス線やガンマ線は光や電波と同じで、すべて電磁波といいます。波長が短いのはエックス線とガンマ線です。
波長が長くなるにつれて紫外線⇒可視光線⇒赤外線⇒マイクロ波⇒長波と変わっていきます。
管球内は真空状態になっており、陰極フィラメントから熱電子が陽極ターゲットにぶつかりエックス線が発生します。発生する多くは熱で1%程度がエックス線になります。
ターゲット内で起きるエックス線発生現象は2つあります。その時発生するエックス線が制動エックス線と特性エックス線です。
制動エックス線は連続エックス線、特性エックス線は固有エックス線ともいいます。
エックス線は、医療で使用されていますが、大量に人体に当てると悪影響があります。しかしその細胞への悪影響ががん治療で役に立っています。
放射線の専門家(診療放射線技師、第一種放射線取扱主任者、作業環境測定士)として放射線関係の記事(医療を含む)の投稿とブログ(サーバー取得、WP、JINなどの設定)を初心者の私が備忘録として今から始める超初心者(特に定年を迎えた方)に伝えたい。