毎年、新年度が始まる4月上旬に横浜(パシフィコ横浜)に於いて『国際医用画像総合展示会』が行われています。今回2022年には新しい技術を搭載したX線ーCT装置が実用化されました。
X線ーCTと言えば、
X線ーCTと言えば、1973年にイギリスのEMI社(ハンスフィールド氏)によって実用化されました。
X線ーCT装置は、現在の医療では、なくてはならない重要な画像診断装置です。X線ーCT装置は日進月歩。いろいろな改良がなされ今を迎えています。
X線管球の改良やヘリカルスキャン、デュアルエネルギーなどありますが、今回の装置は、X線ーCT検査のデメリットを克服した画期的な改良です。
以前から問題視されていたことは、X線ーCT検査による放射線被ばくでした。
X線-CT装置
特に日本では多くのX線ーCT装置が稼働しています。世界中で一番多く、100万人あたり107台が稼働しており、二番目がオーストラリアの56台、三番目がUSAの/41台です。(2014年調べ)
日本では大病院から個人病院までいろいろな規模の施設に整備されているため、検査件数は多くありませんが、必要以上の検査が行われているのではないかと問題視されたこともあります。
CT検査による放射線被ばく低減
全身に100mSv以上の放射線を被ばくすると何らかの悪影響が有るのではないか?X線ーCT検査では、それを超えるのではないかと議論の的となってきました。
今回登場した装置は、従来装置の100分の1程度の低線量で検査が行われるため、被ばく線量も100分の1に抑えられます。
従来、小児に関しては放射線被ばくを考慮して検査を控える傾向にありましたが、これだけ被ばく線量が抑えられれば使用頻度も増え、難しかった病気の早期発見ができるのではないかと期待がかかります。
また、これだけ低線量で検査が出来れば妊婦さんにも使用できるのでは、ないでしょうか。
この装置はドイツのシーメンス社製の『フォトンカウンティングCT』と言い、製品名は『NAEOTOMーα』と言います。
その画期的な装置の核となる技術は日本で開発されたモノです。その会社は沖縄県うるま市にある『株式会社アクロラド』です。
その技術とは、人体を透過したX線量を測る検出器です。少ない線量で綺麗な画像が作れ、エネルギー分解能力にも優れています。
アクロラドは、X線・ガンマ線などの放射線を計測するためのCdTe半導体検出器の製造を行っている会社です。
CdTe放射線検出素子の動作原理
CdTe(カドミウムテルライド)の結晶の両端に電圧を掛けておきます。そこに電磁放射線(X線又はガンマ線)が入ってくると結晶内には、電子と正孔が作られます。
電子は⊕極に正孔は⊖極に引きつけられ電流が流れます。
CdTe半導体検出器について
よく知られている半導体検出素子はゲルマニウム(Ge)やシリコン(Si)を用いた半導体素子ですが、正確な線量を測定する場合、液体窒素などにより冷やさなければなりません。
しかしCdTe半導体検出素子は、室温で問題なく正確な線量を測定することが出来ます。
CdTe(カドミウムテルライド)は、カドミウム(Cd)とテルル(Te)でできている化合物半導体です。
カドミウム(Cd)の原子番号は48でテルル(Te)の原子番号は52と従来の半導体検出素子と比べ大きいため、外部へ逃げる放射線が少なくなるためより正確な線量を測定することができます。
(原子番号が小さい素子では、X線が透過してしまい正しい線量を測定できません)
正しい放射線量を測定するためには、線量計(半導体検出器)に入ってきた放射線が透過して外部へ出ていくと正しい線量ではありません。半導体検出器が全ての放射線エネルギーを吸収した状態でなければなりません。
カドミウムテルライド(CdTe)の量産技術は長らく確立されてこなかったが『アクロラド』は、その量産に成功しました。
被ばく線量 診断参考レベルと実際の被ばく線量
量子科学技術研究開発機構より
- IAEAガイダンスレベルとは:国際原子力機関が出している容認線量。
- 日本放射線技師会ガイドラインとは:日本放射線技師会が出している容認線量
- 実効線量とは:実際に全身に放射線被ばくを受けたと仮定した場合の線量。頭部CT検査を行い頭部のみに放射線が当たっているが、全身に当たっていると仮定した場合の線量
- 胸部にのみ2mGy被ばくした場合の実効線量は0.884mSv となります。
各部位が被ばくした場合の線量を等価線量と言い、体全体が被ばくしたように平均化した場合を実効線量と呼ぶ。
医療被ばくへの取り組みに関しては、遅れている感は否めません。欧米では、放射線診断の被ばく線量の目安である診断参考レベルを導入しているが、日本ではまだ用いられていません。
日本では、関連学会や職能団体である日本放射線技師会からガイドラインが出されています。