日本における自然放射線からの被曝線量は2.1mSv/yです。
ヒバクとは、日本語で、【被爆、被曝、被ばく】の3種類を使います。
最初の被爆は、原爆の被爆です。2番目の被曝の曝はさらされると言うことから被曝を意図としていないため事故による被曝時に使います。
自然放射線からの被曝
日本における自然放射線からの被曝線量は2.1mSv/yです。世界の平均が2.4mSv/yですから少ないほうと言えますが内訳は大きく違っています。
宇宙線からの被曝と大気中のラドンからの被曝、大地からの被曝、食物からの被曝の4種類が自然放射線です。これらを順番に説明します。
宇宙放射線からの被曝
大気圏に入ってくる宇宙線の多くは、強いエネルギーを持った陽子線です。
大気圏内の窒素や酸素、アルゴンの原子核とぶつかって、新たな放射線を発生させます。
これを2次放射線と呼びます。
エネルギーは徐々に小さくなりますが陽子、中性子、ガンマ線など多くの種類の放射線になります。
またこの放射線が次から次へと新たな放射線を発生させます。
地上より離れた地点の放射線量は強く、徐々にエネルギーは弱くなって量も減っていきます。
地上(平地)にいる我々の被ばく量は問題になる線量ではありませんが、高い山の上や飛行機内、宇宙船内外は、地上(平地)より被曝線量は多くなります。
特に宇宙飛行士の船外活動時の被ばくは大きくなります。(太陽フレアの多い時には被ばくが増加します)
日本の地上(平地)での宇宙線からの被曝線量は0.3mSv/yです。
太陽宇宙線とは?
オーロラの記事で書きましたが、宇宙線には、太陽からのプラズマが地磁気をかいくぐって地球へ降り注ぐ宇宙線があります。これを太陽宇宙線と言います。
地球に到達する宇宙線としては多いほうではありませんが、11年周期で多くなります。
黒点の11年周期変動はまだわかっていない。太陽の観測・研究が始まってすでに400年経ちますが、「どうして“11年”なのか」についてはわかっていません。
太陽表面に現れる黒点は、周りより温度が低く、強い磁場に満たされた場所です。黒点の数は太陽の活動状況によって増えたり減ったりしており、それは11年の周期で繰り返されています。
これは太陽の黒点が関係しているようです。
黒点とは太陽の中で黒く見える温度の低い処を言います。
黒点は磁力が強く太陽活動が活発な時期に増えます。
大きな太陽フレアがやってきた場合、太陽フレアの磁場の影響で地磁気が乱れ、プラズマに対する防御力が弱まります。
これが原因で地上への太陽宇宙線が増えます。
いつもは見えない場所でオーロラが見えた場合、大きな太陽フレアが来ている可能性があります。
その太陽フレアの大きなものが『キャリントンイベント』にあたります。
銀河宇宙線
もうひとつの宇宙線は、太陽系の外にある大きな星が、大爆発(超新星爆発)を起こすことによって放出された放射線が地表にまで届く宇宙線です。
これを銀河宇宙線と言います。
銀河宇宙線は大爆発による残骸が飛んできて、それが色々なものとぶつかり合い方向を変えて飛んできます。
銀河宇宙線のほうが太陽宇宙線より多く地上に届きますが、11年周期の活発な時期には太陽宇宙線が増加します。
大気中のラドンからの被ばく
次に我々が受ける自然放射線には、大気中のラドンがあります。
地中にあるラジウムとラドンはウラン系列に属しており、地球が出来上がった頃からある放射性物質です。
地中にあるラジウムが崩壊し気体のラドンに変わり大気中へ放出されます。
これが大気中に含まれる自然放射線のラドン222です。
もう一つのラドン220は別名トロンと言いますが、トロンはトリウム系列です。
下記に系列を示しますが、両系列とも全てを表示していません。抜粋して表示します。
【ウラン系列】
ウラン234→トリウム230→ラジウム226→ラドン222→ポロニウム218
【トリウム系列】
トリウム228→ラジウム224→ラドン220→ポロニウム216
上記に示した系列の内訳をみると全て(質量数)4減っていますが、これは中性子2コと陽子2コのヘリウム原子核のことでアルファ崩壊を示しています。
被ばくの観点から言うとアルファ線による被ばくとなります。
宇宙線からの被ばくが外部被曝であるのに対して、大気からの被曝は内部被ばくとなります。
アルファ線は紙一枚で遮蔽できますから、外部被ばくでは問題ありませんが、内部被ばくは大問題です。
体内に入ったアルファ線は、電荷と質量をもっていますから臓器や組織に与えるダメージは大きくなります。
またラドンやトロンの崩壊後のポロニウムもアルファ崩壊しますので内部被ばくによる影響は多くなります。
大気中のラドンやトロンからの被ばく線量は0.48mSv/yです。
(アルファ線による被曝は大問題と言いましたが、自然放射線の話であり、体内に入ると量は微々たるものなので怖がる量ではありません)
アルファ線の内部被曝は体内の組織に大きなダメージを与えます。この点は頭に入れておくべきです。
大地からの被曝
次は大地からの放射線被曝です。地面からの被曝だけでなく、建物や橋梁などのコンクリート建造物からも放射線被曝はあります。
花崗岩には、ウラン、トリウム、カリウムが多く含まれていると言われています。
日本全国、場所によって大地からの被ばくには大きな差があります。
東日本に比べ西日本は1.5倍程度多くなります。
これは地表近くに花崗岩が多いことが要因とされています。
日本の大地からの平均被ばく線量は0.33mSv/yです。
自然放射線による被曝線量を比較してみると世界平均では、宇宙線からが0.39mSv/y、空気中のラドンからは1.26mSv/y、大地からは0.48mSv/y、食品0.29mSv/yです。
対して日本では、宇宙線からの被曝が0.3mSv/y、空気中のラドンからは0.48mSv/y、大地からの被曝は0.33mSv/y、食物からの被曝が0.99mSv/yです。
自然放射線被曝は、2.1mSvですがその半分近くが食物からの被曝です。何故こんなに多いのでしょうか?
食物からの被曝
私たちの健康維持に必要なカリウムにも放射性のカリウムが存在します。カリウム40がそれです。
カリウム40はβ-崩壊をして、安定なカリウムとなりますが、毎日食物として摂取しているため、体内には一定のカリウム40が存在し、いつも被曝している事になります。
日本は欧米諸国と比べると魚介類の摂取量が多く、ポロニウム210からの被ばくが多いとされています。
魚介類の摂取量だけで説明できるのでしょうか?お答えをお持ちの方は教えて下さい。
京都大学の多田先生に上記についてお尋ねしました。
大気中のラドンが地面に落ちて、
それが食物に入って食物からの被ばくが多く
なることはないのでしょうか?はい、その通りです。
魚介類のポロニウム210と鉛210の起源は、まさにその大気中のラドンです。ラドンは、気体であることのみならず、 水に溶け易いことで、とても厄介な放射性物質ですね。 多田 將 多田先生のメールより
日本は島国であり、採れる魚介類も多いということは、ポロニウム210からの被ばくが考えれるます。(水に溶けやすいということで濃縮されたポロニウムの摂取が多いと考えられます)
また、僕が学生だった頃(1990年代)に学んだときにも、
これくらいでしたので、
そんなに変わっておらず、不自然な値でもないと思います(そのときの説明も、
魚介類の摂取が原因でした)多田先生のメールより
先生とのメール交換で日本の『食物からの被ばくが0.99mSv/y』は問題ないとのことでした。
世界の現状
世界平均の年間自然放射線被曝量は先ほど言いましたが,2.4mSvです。これは平均です。
特に高線量地域として有名なのが、イランのラムサール、中国広東省陽江、ブラジルのガラパリなどがあります。
その中でもイランのラムサールでは日本の20倍以上です。多い処では260mSvもあるです。
まとめ
世界平均の放射線被曝では、宇宙線からが0.39mSv/y、空気中のラドンからは1.26mSv/y、大地からは0.48mSv/y、食品0.29mSv/yです。
日本では、宇宙線からの被曝が0.3mSv/y、空気中のラドンからは0.48mSv/y、大地からの被曝は0.33mSv/y、食物からの被曝が0.99mSv/yです。
世界の平均と比較した場合、食物からの被曝が多いように思いますが、これは魚介類の摂取の多い日本人と海に囲まれた日本の地形に関係があるかもしれません。
世界に目を向けると、日本の10倍以上の地域が多く存在しています。