MRI・MR検査について説明します。
- MRI検査を受けるにあたって事前に検査内容を知りたい方
- MRI検査内容に興味のある学生さんや看護師さん
- MRI検査にについて勉強している放射線技師さん
- MRI写真について撮影方法を知りたい方
MRI検査とは(概要)
MRIは、Magnetic Resonance Imagingの略で、日本語では磁気共鳴画像検査と言います。
以前はNMR(核磁気共鳴)検査と言いましたが、最初のNが核(Nuclear)を表すことから、世間では、核に対する拒否反応があり、今ではMRIやMRと言います。
MRI検査は水素原子核(プロトン)と磁気の共鳴現象を利用しています。
MR本体の円筒形の内部に均一な磁場がかけられた状態で、磁場内に生体を置き、電波を掛けると、臓器や組織、病巣から異なった信号が発信され、その信号を収集し画像を作ります。
磁場内にあるプロトンに電波(RFパルス)をどのように印加するかでいろいろな画像が得られる検査です。
以前のMRI装置は、外部への磁場の影響を減らす方法として『セルフシールド』といい、鉄やコンクリートで磁場を遮断する簡単な方法をとっていました。
そのため、広い場所が必要となり別棟にしたり、影響を与えない場所に設置されていましたが、現在では、『アクティブシールド』が導入されています。
アクティブシールドとは、装置本体と反対の磁場を掛けて静磁場の影響範囲を小さくする技術(磁場の相殺)です。
アクティブシールドを施すことで、磁場の影響を受ける範囲を狭くすることができるようになり、ほかの医療機器と同じフロアーに設置できるようになりました。
1テスラ=1Tesla=1T=10,000ガウスです。
現在医療機関で稼働しているMRI装置は0.2テスラ~3.0テスラまで多くの種類があります。
実際、磁場の強さは0.2T、0.3T、0.5T、1.0T、1.5T、3.0Tの装置が稼働しています。
ピップエレキバンの最高商品は0.2テスラ(2000ガウス)、地磁気の強さは場所によって違いますが日本では0.46ガウスです。
私の使ったことのある装置は0.5T、1.0T、1.5Tです。
MR検査の流れ
検査時には、検査着への更衣と所持品や装飾品を取り外す必要があります。
(入れ歯やコンタクトレンズの取り外しもお願いします)
職員の指示に従って検査室に入り寝台に仰向けになって寝ます。
(乳腺検査では乳房を検査専用コイルに収めてうつ伏せで寝ます)
検査は撮像部位に対応した検査用コイルを付け検査をします。
例えば、腹部では前面に板状のコイルを巻き、後面は寝台に埋め込んだコイルで信号を受信します。
膝や足関節は専用のコイルに足を差し込んだり、フレックス(やわらかい)コイルを巻いたりして固定します。
(コイルには受信用、送受信用があり体全体にRFパルスを当てる場合と検査部位にのみRFパルスを当てる方式のコイルがあります)
検査中はトントンやドドド、ビビビなどといった大きな音が聞こえますがこれは、傾斜磁場のスイッチングによる音です。
検査は20分~40分かかりますが、造影検査がある場合は、合計で60分程度かかります。
検査中は動かないことが大切ですが、やむをえない場合は手に持っているゴムまり状のブザーを鳴らすか、大きな声で担当者に声をおかけてください。
出来れば検査と検査の間(違う音に変わるときに)ブザーを鳴らせば検査効率が落ちません。
胸腹部検査では、息を止めて頂く検査や呼吸・心電同期検査などがあり担当者の指示に従っていただきます。
その他多くの検査ではコイルを付けて横になって頂くだけで、検査中眠って頂いてもよい検査ばかりです。
呼吸同期法とは、お腹にひも状の蛇腹を巻いてお腹の動きが止まっているときを狙ってデータ収集を行います。
心電同期法とは、心電波形の一定部分でデータ収集を行います。
パルス同期法は指に専用の器具を取り付け同期させることにより動きの少ない画像を得ることができます。
検査を受けられる場合、同期を意識する必要はありません。意識すると呼吸や心電図が乱れるため、平常心を心がけましょう!
息止め検査は数回に分けて行いますが、断面が重ならないように、息の吸い方を毎回同じようにすることが大切です。
MR検査で出来ること
MRI検査は頭部や脊髄、骨盤、関節などの呼吸や心臓の動きの影響が少ない部位で力を発揮します。
最近の高性能装置では胸腹部や心臓検査、消化器科分野など全身どこでも良い画像が得られます。
特に乳房検査や胆管や膵管(MRCP検査)などでは、高画質の画像が得られるようになりました。
また、MRでは造影剤を使用しないで血管を描出することができます。これをMRA(MRアンギオグラフィー)と言います。
頭部血管以外にも非造影MRAは可能ですが、全ての血管が造影なしで出来るわけではありません。
特に細い血管は、造影剤を使うことがあります。細い血管は血流が遅いためきれいな画像を得られません。(詳しくはMRの原理で説明します)
装置にもよりますが『ファンクションMRI』と言う脳の検査ができます。
脳腫瘍の手術範囲を決める検査としてこのファンクションMRIが使われることがあります。(血流量の変化を画像化出来るアプリが内蔵されています)
指を動かしたり、画像を眺めたりすることにより脳の血流増加場所を画像にします。
MRI検査は組織(密度)分解能に優れているので、組織や臓器の判別がしやすい検査です。
三叉神経や聴神経など神経の描出が可能です。(脳脊髄撮影において、神経が脳脊髄液に浮かんだように写し出されます)
本来はT2強調画像であるため脳脊髄液が白く描出されますが、画像を白黒反転しているため、神経や血管は、黑い部分である脳脊髄液に浮かんだように見えます。
MR装置では、組織や臓器に含まれているプロトン(水)を画像化しています。
人体で言うと脂肪、脊髄液、筋肉、骨などプロトン量や緩和時間の差により違う画像が得られます。
T2強調画像では液体(水)は高信号となり脂肪は中程度の高信号となります。
T1強調画像では液体は低信号、脂肪は高信号となります。
脂肪抑制画像を撮ることで脂肪に隠れた部分の画像や臓器に脂肪が含まれているかどうかなど多くの情報が得られます。
造影剤を使って脂肪抑制T1強調画像を撮れば、脂肪に隠れた臓器や脂肪に埋もれた病巣などがきれいに描出されるなど、より多くの情報を得ることができます。
1番上の画像がT2強調画像です。赤矢印が眼球で眼球内が水です、眼球後部の青矢印が脂肪です。
2番目の画像がT1強調画像です。3番目がT2画像の脂肪抑制画像です。
1番目の画像から脂肪の信号を抑制した画像です。視神経がハッキリ見えます。
4番目の画像がT1強調の脂肪抑制画像ですが、従来T1強調の単純検査で脂肪抑制は行いません。
ご覧になってわかりますが、ザラザラの画像で信号強度が足りません。
本来T1強調の脂肪抑制は造影時に使用する撮像法です。
この脂肪抑制を使用することで脂肪に隠れた病巣を見つけることができます。
MR検査の禁忌
(下記装置を装着されている方は検査を受けられません)
- 心臓ペースメーカーを埋め込んでいる方
- 人工内耳、人工中耳の方
- 神経刺激装置を装着している方
近年、MRI対応の心臓のペースメーカーが開発されました。
埋め込みを行われたのが最近であればMRI対応の可能性がありますので、確認してください。
(MR対応の方はそれを示すカードをもらってると思います)
MR検査に対する注意喚起
(下記を装着されている方は、医師に相談してください)
- 金属製の心臓人工弁を入れている方
- 脳動脈瘤用クリップを入れている方
- 血管へのステント挿入している方
- 金属の義眼底の方
- 入れ墨のある方(アートメイクも含む)
- 閉所恐怖症の方
閉所恐怖症の方はそのままでは、検査を受けることが難しいので眠剤の使用など医師に相談してください。
私の経験則ですが参考にしてください。
私がMR検査を担当していた時のことです。
使用装置は1.0テスラ装置でしたが、動脈瘤用クリップを入れた患者さんでもMR検査をしたことがあります。
脳神経外科の先生が言うには「何年も前にクリップを入れた患者さんは、脳組織がクリップをしっかり覆っているので動くことはない」ということで検査をしました。
使用装置が1.0テスラと言うことが、前提にあるかもしれませんが、現在の高性能装置は3.0テスラであるため比較になりませんが‼そんなことがありました。
使用装置は1.5テスラ装置でしたが、入れ墨のある患者さんでも、意識のある患者さんはMR検査を行っていました。
入れ墨のある患者さんの検査ができない理由が火傷であるため、患者さんに事情をよく話して、「入れ墨の入った場所が熱くなったり、痛くなった場合は直ぐ教えてください。」と伝えて伝達ブザーを渡して検査をしていました。
メーカーの作成した撮像方法の中に金属の影響を受けにくい(金属があってもきれいな画像が撮像できる)撮像法があります。(火傷とは別の話ですが金属に対応した撮像法が用意されています)
注意喚起や文言にすると施設はリスクマネージメントの観点からリスクを減らすために”検査は出来ません。
”と言うことになってしまいますが、専門医や放射線科医に相談すれば事態は変わるかもしれません。
子供さんの検査では、一人で検査室内に居ることが難しいので、検査中手を握ったり、足に触れたりすることで検査が受けられることがあります。
施設によっては、付き添い用のヘッドフォンや耳栓が用意されていますので担当者にお尋ねください。
また子供さんの好きな人形と一緒に検査を受けてはいかがでしょうか?
金属チェック
補聴器、時計、入れ歯、メガネ、鍵、ヘアピン、ネックレス、ピアス、カイロ、カラーコンタクト、シップ薬、エレキバン、コルセット、ベルト、ニトロダームTTS、ニコチネルTTSなどは更衣室でお取りください。
携帯電話、鍵、クレジットカード、定期券なども持ち込めません。
- ヒートテックやインナーボディーヒーターなど防寒衣類は、火傷の恐れがあります。
- アイシャドーやマスカラなどの中には、金属を含んでいるものがあり火傷や画像劣化につながります。
- カラーコンタクトレンズは、金属類を含むものがあり、眼球へ障害を引き起こす恐れがあります。
- キャッシュカードや定期券などの磁気カードは、データ消去の恐れがあります。
- 時計、補聴器、携帯電話、スマホの持ち込みは故障の原因となります。
私がMRI検査を担当していたころの話ですが、MR検査中に足元に掛けた毛布から焦げたにおいがしたことがあったようです。
毛布はコバルトブルーの青色で金属のコバルトが含まれていたため毛布が焼けたようです。
アイシャドウにはコバルトが使われていますし、ヒートテックも火傷の恐れがあるため取り外しやふき取りが必要です。
MR担当者へ:金属探知機を利用して金属の有無を調べますが、患者さんが床に立っている場合、足の部分の金属探知でコンクリート内の金属が反応することがあります。
慎重な確認が必要です。さもないと金属チックの信頼性が疑われ、金属チェック自体が行われなくなります。
金属があると、このようなアーチファクトが出ます。診断価値のない画像になることが多くあります。
MR検査では金属に弱い(アーチファクトの出やすい)撮像方法と強い(アーチファクトの出にくい)撮像法があります。
スピンエコー法は金属アーチファクトに強く、グラジエントエコー法、ディフージョン強調は弱い検査です。
金属が入った生体では火傷の他に画像も悪くなります。
撮影者の皆さんはわかっておりますが検査によって金属アーチファクトに強い検査とアーチファクトの出やすい検査があります。
MR造影検査
臨床に使われるほとんどのMRI造影剤は、組織内のプロトンのT1緩和時間を短縮するので、造影検査はT1強調検査のみ行います。T2強調画像は造影前後でも変わりません。
MR検査においても、造影検査は単純検査に比べ診断の能力を大きく飛躍させます。
MR装置が開発された当時は、『MR検査は画期的な検査で造影検査はいらない』と言われましたが、今では重要で必要な検査として認識されています。(造影剤の使用がなければ鑑別できない腫瘍があります)
造影剤は良性腫瘍と悪性腫瘍の鑑別に使われるほか、腫瘍の描出能に優れ、腫瘍の範囲が分かりにくい脳腫瘍や転移性脳腫瘍に有効です。(頭部以外にも体全体の腫瘍描出に優れています。
前立腺や乳房では造影剤の動態を追うダイナミック撮影が有用です。MRI造影検査(剤)は、CT造影検査(ヨード造影剤)と比べても副作用の発生率が少なく安全な造影検査(剤)です。
MRI造影剤
MRI造影剤には、陽性造影剤と陰性造影剤があります。(陽性造影剤:EOB-プリモビスト、オムニスキャン、プロハンス、マグネビスト、マグネスコープ、フェリセルツ、ボースデル)(陰性造影剤:リゾビスト、フェリセルツ、ボースデル)経口造影剤(フェリセルツ、ボースデル)フェリセルツ、ボースデルは使い方により陰性及び陽性造影剤としても使用できる。http://pha.medicalonline.jp/img/cat_desc/MOa_table1.html
造影検査の禁忌
(主治医との相談が必要です。)
- 腎臓の病気や腎臓障害がある方(禁忌)
- 人工透析を受けられている方(禁忌)
- 喘息のある方(禁忌)
- 過去にMR造影で副作用の症状が出たことがある方(禁忌)
- 妊娠中の方
- 老人や子供
施設によっては、①~④まで禁忌にしている施設もあります。
NSF(腎性全身性線維症)とは、数日から数か月後に、皮膚の腫脹、発赤、疼痛、皮膚の硬化が生じ、手足の動きが悪くなり寝たきりとなることがある。過去には死亡例もあります。
これは腎機能の悪い方へのガドリニウム造影剤の投与で体内に残留するガドリニウムの毒性によるものです。腎障害患者における ヨード造影剤使用に関する ガイドライン2018
腎機能が正常な方でも繰り返し造影剤を使うことで、徐々にガドリニウムが蓄積しNSFを引き起こすのではないかと懸念されています。
授乳中の女性がガドリニウム造影剤を使用した場合、お乳へは、ほんの微量混ざりますが乳児への影響はほどんどありません。
しかしNSFの観点から、造影後24時間は授乳を避けるべきとの報告があります。経口造影剤ボースデルでは、造影後48時間は授乳を避ける必要があります。
名古屋大学大学院医学系研究科 病態内科学 腎臓内科
MRの特徴(CTと比較)
CTとの違いはX線を使用しないため放射線被ばくがなく、妊婦さんや小人にも問題ないとされていますが、人体の静磁場と電波の影響についてわかってないこともあります。
CTは輪切り画像ですが、MRIでは、輪切り以外にも縦切り(矢状断)横切り(冠状断)などの画像と任意の断面画像を得ることができます。
頭部緊急検査で、脳出血が疑われる場合はCT検査、脳梗塞が疑われる場合はMR検査が有用です。
CTでは梗塞発症後、6時間から8時間程度経過しないと画像化が難しい(脳梗塞が画像に現れない)のですが、MRでは発症2~3時間で画像化でき、画像も描出能の高い画像が得られます。
緊急を要しない検査では、MRは撮影時間が長いため、脳・脊髄・四肢・子宮・卵巣・前立腺など呼吸による動きに関係しない部位では、大変優れた検査です。
CTに比べ検査時間が長く、意識のない患者さんの検査や金属チェックが難しいため、緊急時検査はCTがファーストチョイスとなります。
頭部MR検査
寝台に仰向けに寝て頭にカプセル状のコイルを被り検査を行います。位置決め画像を撮り撮影角度を決めて検査が始まります。(最初の数分はこの位置決め画像撮像と位置決めです)
大きな音が繰り返し聞こえてきますが、2分から4分毎に音が変わります。これは下記に示す撮像方法を順次撮っているからです。
疑っている病気により撮像法のバリエーションを変えますが、超急性期脳梗塞に関して言えば、ディフュージョン(DWI)、フレアー(FLAIR)、MRA、これが標準の頭部検査です。
施設によっては、T1強調像、T2強調像を入れている施設もあります。超急性期脳梗塞画像は、DWIで高信号、ADCマップでは、低値となります。
救急検査時に、DWIの高信号で急性脳梗塞とする場合が多くありますが、ADCマップを作成して、低値により確定診断ができると考えます。
急性期梗塞の場合ディフュージョンの高信号、ADCマップの低値、亜急性期ではフレアーの高信号、慢性期ではT2強調像の高信号で梗塞部位が描出されます。
T1強調画像は、解剖図に近い画像が撮影できます。MRA画像は脳梗塞治療時に有用となるため緊急検査として必要な検査と考えます。
脳出血、脳梗塞、脳腫瘍以外にも頭部の病気を画像化できます。輪切り以外の縦切り(矢状断)、横切り(冠状断)を追加することで病巣の状態を詳しく観察できます。
MRAとは血管撮影のことで、このサイトでは造影剤を使用しない検査として説明しています。頭部血管とは限りませんが、頭部の動脈瘤や狭窄を見つける検査として有用です。
血液の流れを画像化するため、ある程度の太さと血流がないと正しい評価ができないため、撮像できる部位は限定されます。細い血管を撮像する場合は造影剤を用いることがあります。
下記に腎動脈画像を提示します。造影剤を使用しないでTOF(time of flight)技術で撮像しています。
頭部検査について説明を加えましたが、その他の検査も同様に検査したい場所に専用コイルを着けて検査を行います。
心臓や肺、腹部など動きを伴う場所は心電同期や呼吸同期や息止め検査となります。
最後に
現在のMRI検査は体内に埋め込まれた金属の影響を抑える撮影シーケンスが考えられているため診断への悪影響を防ぐことができます。
3.0テスラの最新装置が多くの施設に整備されてきているが、金属やカード類の持ち込みには以前の装置以上に気を付ける必要があります。
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