MRA検査は造影剤を使用しないで血管を描出します。
- MRA検査を受けるために検査内容を知りたい方
- MRA検査に興味のある方
- MRA検査の原理を知りたい方
MR検査において血管を描出する方法は、造影剤を使用するMRAと使用しない非造影MRA検査がありますが、今回は、使用しない非造影MRAについて説明します。
MRA(magnetic resonance angiography)とは?
MRAとはmagnetic resonance angiographyの略語で血管を描出する検査です。
非造影MRAには、TOF (time of flight)法とPC(phase contrast)法とそれぞれに2D法と3D法があります。
造影剤を使用したMRAには及びませんが結構綺麗な血管画像が得られます。
特に頭部血管は臨床で使われ威力を発揮しています。
その方法が、TOF (time of flight)法です。in flow効果を利用した撮像法です。
もう一つの撮像法である血流の速度と方向による位相を画像化する撮像法のPC(phase contrast)法について説明します。
TOF (Time Of Flight)とは?
通常、MR画像を作成する際、任意の断面にRFパルスを印可して信号を得ます。
その断面の磁化が回復しない間に次のRFパルスを印可すると、磁化ベクトルは小さくなり大きな信号を得られません。これがTOF法です。
TOF法のデメリットと改善方法
TOF法で広範囲を撮像しようとする場合、血管の撮像範囲後期、(血流出口付近)では信号が小さくなり、血管の撮像範囲前期(入り口付近)との信号差が大きく血管が細くなったり切れたような画像となります。
これの改善方法が、TONE技術とマルチスラブ技術です。
断面④のスライスについて注目します。静止部は何回もRFパルスの印加によって磁化ベクトルが小さくなります。
一方血管には、新たな血液が流れ込んできますが、この血液はRFパルスの影響を受けていないため大きな磁化ベクトルが維持されており血管からは大きな信号を得ることができます。
断面①から順に④まで後方より画像作成を行えば、効率よく強い信号を得ることが出来ます。流れの速い血管は綺麗に撮像(描出)されます。
注意が必要な点として、流れが遅くなった場所や乱流(動脈瘤内の渦)の起きている場所では低信号となり動脈瘤が診えなくなります。
また撮像面に対して血流が極端に斜め方向だったり、横方向(撮像面と平行)、反対方向だと信号が少なくなって狭窄と見間違うこともあります。
臨床でよく言われる事ですが内頚動脈サイホン部で流れが反対となるため信号低下が観られる。とされています!
臨床で使用される頭部MRA検査においては、動脈瘤内の乱流(動脈瘤内の渦)により信号低下をもたらすため、MIP画像だけの評価ではなく原画像の評価も必要です。
(MIP処理とは、薄いスライス画像を重ね合わせて、最大濃度部分を強調して作成した画像のことです)(原画像とは、MIP処理を行う前の元画像のことです)
太い血管は綺麗に描出されますが細い血管や流れの遅い血管描出には難があります。
またin flow効果を利用しているため撮像範囲も広く出来ません。
TONE(Tilted Optimized Non-saturated Excitation)とは?
任意の長さの血管をMRAで描出する場合、TOF MRA撮像法を使用して行いますが、新たな血液が流れ込んでくる最初と最後では信号差に違いが出来ます。
最初(流入部)の磁化ベクトルは大きく、信号も大きいままですが、最後(流出部)は磁化ベクトルが小さく信号も小さくなります。
これを改善するためにTONE技術が開発されました。
TONEとは、Tilted Optimized Non-saturated Excitation(傾斜最適化非飽和励起)の頭文字をとって、TONEと言います。
メーカーによっては、ramped RF(傾斜の付いたRF)と言います。
血液の流入部のフリップアングルを小さく、流出部近くのフリップアングルを大きくして血管全体が均一な濃度になるようにする手法です。
脂肪抑制法(アウト オブ フェイズ)とは?
MRA検査の脂肪抑制方法:血管を描出するMRA検査ですが、血管内の信号は大きくその他の組織の信号は小さくしたい。
しかしMIP処理を行うと脂肪組織の信号が完全に消えないことがあります。
そこで脂肪を抑制するアウト オブ フェーズ(オポーズド フェーズ)にあるTEを選択することにより脂肪抑制が出来ます。
マルチスラブ法とは?
任意の長さの血管をMRAで描出する場合、TOF MRA撮像法を使用して行いますが、新たな血液が流れ込んでくる最初と最後では信号差に違いが出来ます。
よって血管が細くなったり切れたような画像となります。特に3DMRA検査においては、強く現れます。
撮像範囲を幾つかに別けて、撮像範囲全てが大きな信号を得る方法として考案えられたのがマルチスラブ法です。
幾つかのスラブに分けて撮像しますが血流最終部方向①から流入部方向④に対して(血流と反対方向のスラブから)信号を得ることで全体の信号低下を抑えることが出来ます。
『スラブ・マルチスラブ』を『チャンク・マルチチャンク』と言うMRメーカーもあります。
MTC(magnetization transfer contrast)とは?
MT(magnetization transfer)効果、MTS(magnetization transfer saturation )効果について説明します。
従来MT効果とは画像面の信号低下をもたらすとしていますが、MRA検査においては自由水以外の信号を抑えるために使用される効果です。
(MTとは、自由水プロトンと高分子プロトンの間ではプロトンの交換が行われることを言います)
PC(phase contrast)法とは?
MRAにはもう一つ撮像方法があります。それがPC(phase contrast)法です。
静止組織と流れている血管に傾斜磁場を印加した場合、静止組織の位相には変化はありませんが動いている血液はスピン位相が変わることを利用しています。
双極性の傾斜磁場パルスの印加を繰り返すことで複数のデータを収集することが出来ます。そのデータを引き算して血管の描出を可能としています。
血流速度を設定することで、任意の血流を描出できるので、静脈の描出も可能となります。
ただしX軸、Y軸、Z軸の3方向に傾斜磁場を両極に印加する必要があるため撮像時間が長くなるデメリットがあります。
メリットとして画像データの差し引きを行うためTOFでは綺麗に消すことが出来なかった静止画像部分の脂肪信号や水信号を完全に消すことが出来ます。
またT0F法に比べて撮像範囲を広くできます。
VENC(velocity encoding)とは
撮像したい血管の最大速度を設定することで、目的とする血管を綺麗に描出させることが出来ます。そのパラメーターは双極傾斜磁場の傾斜強度と時間で決まります。