サーベイメータと個人線量測定線量計の原理を簡単に説明します。
- サーベイメーターや個人線量計について知りたい方
- 線量計の種類や測定方法や範囲について知りたい方
- 測定装置の原理について知りたい方
電離箱式サーベイメータ
電離箱に入射した電磁放射線(エックス線、ガンマ線)が空気と同じ原子番号で作られた壁によって電離され、陽イオンと陰イオンが生成されます。
その両イオンが陰極と陽極に引き寄せられ電気が流れます。その電流を測定することで線量を決定します。
陰極と陽極にはイオンの再結合が起こらない程度の電圧が印加されています。
計測可能な測定範囲:1μ㏜/h~300m㏜/h
GM計数管式サーベイメータ
GM計数管式サーベイメータは、中央に陽極芯線を張り周囲に陰極壁を作った構造で、中には有機ガスを充填させてあります。
そこに電磁放射線(エックス線、ガンマ線)が入射するとガスをイオン化します。その後、電極近くで増殖して電流が流れますが、回復するまでに時間がかかるため数え落としがあります。
また高線量率測定時には窒息現象がおこり測定不能となることがあります。
印加電圧は高く連続放電を起こす手前のGM領域を使用しています。そのため弱い放射線に対しても感度は良好です。
計測可能な測定範囲:0.1μ㏜/h~300m㏜/h
シンチレーション式サーベイメータ
シンチレーターと光電子増倍管を連結した線量計です。シンチレータに入ってきた電磁放射線(エックス線、ガンマ線)はシンチレータとの相互作用により電子を生成します。
その電子を発光体が吸収して可視光や紫外線を放出し、光電面に入ります。
光電面で光電子に変換され光電子増倍管により100万倍に増幅され電流が流れます。この電流を測定することで線量を決定します。
計測可能な測定範囲:0.03μ㏜/h~30μ㏜/h
フィルムバッジ
写真乳剤を塗布したフィルムの前後にいろいろな種類のフィルターを付け、それぞれの写真濃度から線質や線量を特定する線量計です。
安価で、耐久性があり、1m㏜程度の低線量まで測定できます。それ以下の測定は不能です。被ばく線量の測定が可能な線量計です。
高温多湿場所での長期間使用する場合は、潜像退行が問題となります。
計測可能な測定範囲:0.1mSv~1Sv
蛍光ガラス線量計
蛍光ガラス線量計は、電磁放射線(エックス線、ガンマ線)が線量計に入ってくると、ガラス素子に含まれる銀が電離され電子と正孔が出来ます。
(電離箱測定器で言うと正孔は正電荷をもつイオンと同じ)これに紫外線を当て、出てきたオレンジ色の光を計測します。
オレンジ色の光と線量が比例しますので被ばく線量の測定ができます。この線量計は何度も線量を再計測でき、再使用も可能です。また放射線量の測定もできます。
計測可能な測定範囲:1μ㏜~10㏜
熱ルミネッセンス線量計
熱ルミネッセンス線量計は、電磁放射線(エックス線、ガンマ線)が入射すると電気を通しにくい部分(絶縁体≒バンドギャップ)に電子と正孔が出来ます(線量計に電気がたまった状態にあることを意味しています)
それを高温で熱して発する可視光量を測定することで線量測定が出来ます。
総発光量と電子・正孔が比例するため放射線量の測定(被ばく線量の測定)が出来ます。
何回も繰り返して使用出来ますが、再度の計測(高温で熱して可視光量の計測)は出来ません。1度計測に失敗するとデータは消えてしまいます。
計測可能な測定範囲:1μ㏜~100㏜
光刺激ルミネッセンス線量計
光刺激ルミネッセンス線量計は、電磁放射線(エックス線、ガンマ線)が素子に入射すると素子に含まれる捕獲穴に電子と正孔が捕らえられ、安定した状態で存在します。
そこに可視光を当てると発光して電子と正孔は結びつき元に戻ります。その光を測定して線量を決めます。
この線量計は線量の再計測と再使用ができます。また放射線量の測定もできます。
計測可能な測定範囲:10μ㏜~10㏜
半導体式ポケット線量計
半導体式ポケット線量計は、電離作用を利用しています。P型半導体(陰極)とN型半導体(陽極)を接着して自由に電子が流れないような状態を作ります。
P型半導体(陰極)とN型半導体(陽極)の間には空乏層が存在し空乏層に電磁放射線(エックス線、ガンマ線)が入ると放射線が電離され電子と正孔ができます。
P型半導体(陰極)に正孔、N型半導体(陽極)に電子が移動し電気が流れます。
印加電圧が低くコンパクトですが、低エネルギーエックス線には感度が低い線量計です。
計測可能な測定範囲:1μSv~1Sv
中性子線測定器(レムカウンタ)簡易説明
レムカウンタは、円筒中心に陽極を置き外側に陰極を作った構造で中に混合ガスが封入してあります。これは比例計数管と同じです。
この比例計数管の周りには減速材としてポリエチレンを巻き付けてあります。エネルギーの大きな速中性子線が入ってきた場合、減速材で熱中性子に変えます。
測定器の中では小さな核反応を起こさせてアルファ線が生成されますので、そのアルファ線の電離作用で装置に電流が流れそれを測定します。
レムカウンタとロングカウンタについて質問を受けますが、同じものと考えても問題ありません。