マンモグラフィー検査は乳房の異常を調べる検査です。特に乳がんを調べる検査です。
乳がんについて
日本の乳がん罹患率は高く、12人に1人から11人に1人に近づきつつあります。
また、40代からの罹患率の割合が、非常に高いんです。死亡率は大腸がん、肺がん、すい臓がん、胃がんに次いで5番目なんです。
検診率を世界と比較した場合、日本は、41%と低く全体の半分にも達していません。欧米の検診率は高く、アメリカでは80.8%、イギリスでは75.9%、オランダでは、72.2%です。
(OECD Health統計より)41%の検診率でありながら死亡率が低いと言う事は、早期発見、早期治療すれば、今よりも、ずっと死亡率を下げることができるのではないでしょうか。
下記に乳がんの発生しやすい位置を示してあります。風呂上がり鏡の前で、ひきつりやくぼみはないか、しこりや硬いグリグリはないか目で見て指先で触って調べましょう。
あれ?と思ったらお医者さんに、相談しましょう。心配ばかりしていると、乳腺をしこりと間違えたり気分が落ち込むばかりで良いことはありません。
検査することになっても、多くの施設では、女性技師が乳腺撮影を担当していますので恥ずかしがらずに検査が受けられます。
マンモグラフィー撮影について
検査には問診、マンモグラフィー、超音波検査、視触診などがありますが、今回は放射線関係のマンモグラフィーについて説明します。
(多くの施設では、女性の技師が撮影を担当しています)
下着を取った状態でガウンを付け、撮影に臨みます。パネル検出器(以前はカセット)と樹脂製の圧迫版で乳房を挟み撮影します。乳房にしわが寄らないように訓練を受けた女性技師が撮影にあたります。
強く乳房を圧迫することで、被ばく線量は減り、病気を見逃すリスクも減りますが、結構強い痛みを感じる方も見られます。
基本立位で撮影しますが、痛みに弱い方は、座位での撮影をおすすめします。担当技師に痛みに弱いことをお伝え頂くことも重要です。
ごく稀にですが、痛みで意識を失くされる方も見えます。後ろにソファーを置いたり、柔らかいマットを床にしたりと対策をとっている施設もあります。
検診では、両方の乳房を2回づつ計4回撮影します。(50歳以上で、国が行っている乳房検診の場合は、1方向射位撮影で右・左で2枚です)撮影方向は、頭側から足側と内側から外側斜位の2種類です。
時には追加撮影や拡大撮影をすることもありますが、追加撮影などをする場合は、検診から外れ一般診療になります。
施設によっては通常撮影と断層撮影を(トモシンセシス)患者さんが選択する施設があります。
若い方には、断層撮影(トモシンセシス)をオススメします。若い方は乳腺が充実しているため、撮影も難しいのですが、何より診断が難しいのです。
乳腺が充実していても診断を付けやすい薄いスライス画像が撮影できる断層撮影が良いのではないでしょうか。
生理前は女性ホルモンの関係で乳房全体が腫れているので、撮影時は強い痛みも感じます。
一方撮影も大変で、期待した画像が得られないこともあります。腫れの少ない月経後に検査を受けるようにしましょう。
撮影や撮影時の注意事項
撮影時は、ネックレス、イヤリング、磁気治療器、湿布などは取り外してください。
髪の毛は縛り、皮膚面に何もない状態で検査を受けましょう。
ペースメーカーや豊胸手術をされている方は、撮影担当者に申し出てください。
撮影に対し心配事や不安な事があれば、担当技師にご相談ください。
緊張の強い方や痛みを感じやすい方も撮影担当者と相談してください。
マンモグラフィーに関する認定
マンモグラフィー検査の精度には、撮影装置、撮影技師、読影医師が関係します。
その精度を上げるために撮影技師認定、施設(装置)認定、読影医師認定制度を設けています。
検診や検査を希望される方は、3つの認定を取得している施設を選びましょう!
日本乳がん検診精度管理中央機構の研修、認定試験を受けて合格者のみ認定されます。
施設認定は、装置・画質・線量が評価され合格施設のみ認定されます。
その3つ認定の正式名は、「検診マンモグラフィ撮影認定診療放射線技師」、「検診マンモグラフィ読影認定医師」、「マンモグラフィ検診施設画像認定」です。
上記はマンモグラフィー検診の認定ですが、実際の診療においても同様の撮影や診断をしますので、検診に限った能力(認定)ではありません。技術に対して与えられています。
放射線被ばくについて
2年に1回のマンモグラフィー検査では、放射線被ばくによる乳がんのリスクについては考慮する必要は少ないと考えます。
乳腺の放射線感受性は高く、ICRPの分類では組織荷重係数が最も高い臓器グループに属していますので、2年に1回のペースで検査を受けましょう。
鏡の前の観察や自己触診を忘れないで、心配があったら医師に相談しましょう。
組織加重係数は放射線に対する組織の感受性を表す係数です。ICRPの2007年の勧告で、乳房の組織加重係数はそれまでの0.05から0.12に引き上げられました。
マンモグラフィーの被ばく線量は米国放射線専門医会によると「1方向あたり吸収線量で3mGy以下」という勧告に準じて日本でもこれが基準となっています。
マンモ専門医師によれば技術革新により現時点では1~2mGyまで低減されているそうです。
トモシンセシスとは
Tomography(断層)とSynthesis(合成)を組み合わせた造語です。1回の撮影で設定した厚みの画像が何枚も作成できます。
実際の撮影ではX線を発生させる部分(X線管球)を左右に移動させながら撮影を行います。移動角度は15度程度です。
角度を小さくすればスライスは厚くなり、角度を大きくすれば薄いスライスが撮影できます。撮影時間は通常撮影よりは長くなります。
トモシンセシスは、乳腺の重なりが多くなる乳腺の多い充実した乳房に対して威力を発揮します。
ミリ単位以下の画像を何枚も一度に撮影することができ、乳腺の重なりを分離表示できます。
トモシンセシス技術は、過去に使っていた胸部断層撮影にあります。結核の多かった日本では、肺野の断層撮影が頻繁に行われました。
胸部断層撮影の原理を図解入りでお伝えします。
トモシンセシスはX線発生部分を移動させて撮影する技術ですが、胸部断層装置はデジタル技術のない時代のアナログ検査であり、X線発生部分と同時にフイルムも移動させます。
そうすることで、任意の断層画像が出来ますが、トモシンセシスは受光部は固定で、画像構成技術を利用しています。
トモシンセシスの素となった断層撮影装置です。管球が左から右に動き、フイルムは右から左に動いて撮影されフイルム中心に写る部分だけが鮮明に写し出されます。
その他の部分はボケとして写し出されます。全てのものがフイルムに映し出されますが断面中心以外はボケ画像となります。
フイルム11枚の重ね合わせ画像としていますが、実際は1枚の画像に全てが乗ってきます。
乳がんになりやすい因子
乳がん患者さんの1割が遺伝的に乳がんを発症しやすい体質を持っていると考えられます。その他、多くの人はホルモン要因と食生活などの因子が影響していると考えられています。
女性ホルモン要因とは何かというと、エストロゲンが長期間分泌されている方はリスクが高く、長ければ長いほど乳がん発症リスクが高くなっていきます。
遺伝性・家族性要因・一親などの乳がん・卵巣癌の家族歴・家系内に複数の乳がん・卵巣がん患者の存在・家系内の男性の乳がん
女性ホルモン要因・初経年齢が早い・閉経年齢が遅い・出産歴がない・初産年齢が遅い・授乳歴がない
生活環境要因・閉経後の肥満・飲酒習慣
乳がんと遺伝の関係
乳がん発生部位について
乳がんが発生しやすい場所としては、乳首を中心に乳房を4つに分けると、一番多いのは乳房の外側の上の方(全体の50%)、次いで内側の上(20%)、外側の下(10%)、脇上部(10%)、内側の下(5%)、乳首付近(5%)の順です。(文献により多少%が違います)
多くは、母乳を運ぶ乳管で発生する乳管がん(約95%)で、母乳を作る小葉で発生する小葉がん(約5%)が続きます。
それ以外にほんのわずかですが特殊ながんとして粘液がん、管状がん、腺様のう胞がんがあります。
がん細胞が、乳管や小葉内にとどまっているがんを非浸潤がん、外まで進行しているがんを浸潤がんと言います。 乳がんの分類と発生部位
乳がんは女性のがんというイメージが強いですが、まれに男性にも発生します。
乳がんの啓発にピンクリボン運動が行われています。多くの方に乳がんに対する正しい知識を得ていただき多くの方の命を守る運動です。
家族や身の回りの方々の健康のためにもぜひ運動を広めましょう。
診療放射線技師として多発部位を意識しながらマンモグラフィーを撮影することが大切です。
最後に
乳腺検査にはマンモグラフィー検査以外にもMR検査、CT検査、超音波エコー検査などがあります。ファーストチョイスとして行われる検査が、マンモグラフィー検査です。
精密検査として用いられる検査がMRI検査です。ダイナミックMRI検査は、造影剤を使用することで、診断率を大幅に上げることが出来ます。