一般撮影(レントゲン撮影)について
今日は、病院1日体験ありがとうございました。午後は、レントゲン撮影を行う一般撮影室の見学と実験をしましたがおもしろいことや興味を引くことはありましたか?
見学中に解らなかったことや、知りたいことがあれば手を上げて質問してください。
- エックス線検査全般について知りたい方
- エックス線とは何か知りたい方
- エックス撮影でどんな写真ができるか知りたい方
- エックス線の発生方法について知りたい方
- エックス線被ばくについて知りたい方
キンタくんの疑問 小学5年生
なぜ、息を吸って止めたり、吐いて止めたりするの?
胸の撮影は、息を吸って止めますが、お腹の撮影は、吐いて止めます。
これは、胸の撮影は肺の中にいっぱい空気を入れて、肺を大きくして肺が膨らんだ状態で撮影します。そのほうが、診断がし易い画像を撮るためです。
たとえば、ビニール袋に字を書いて少し膨らませた時より、いっぱい膨らませたときのほうが読みやすいですよね‼
反対にお腹の撮影は吐いて止めてもらうのですが、これは吐くことによって、肺がちじみ横隔膜が上がって内臓の重なりが少なくなります。
こうすることで診断し易い写真が撮れます。胸部と腹部も広がった状態で写真を撮るということですね。
なぜ、同じ場所(部位)を何回も撮るの?
骨折があるかないかわからない程度の場合は、多方向から撮ることにより小さな骨折を見逃さない写真が撮れます。
大きな骨折の場合は、状態の把握や治療方針を決めるためにも多方向からの撮影が必要です。
骨折がある場合どの程度の曲がりや骨のズレがあるか見なければなりません。
頸椎撮影においては、最大7方向撮影することがあります。
撮り方は、正面、側面、右射位左射位、前屈、後屈 開口位の7枚です。
頸椎は第一頸椎から7つ椎体がありますが頸椎の1番と2番はそのままでは撮影できないため口を開けて撮影します。
椎体の動きや位置関係を知るために前屈(首を下に向ける)後屈(天井を見る)撮影を撮ることがあります。
方向の他に動態と言って動かして撮影することで状態を把握することがあります。
今、エックス線フィルムって無いの?
少し前までは、フィルムを良く使ってましたが、フィルムは少なくなってきました。
昔はアナログでしたが、現在はデジタルになっています。デジタルになって画像転送もできます。
そのため画像データは撮影室から診察室まで、画像を移動しなくてもその場で転送されてきた画像を観察するだけです。過去画像との比較も簡単にできます。
病棟で先生が写真を見たい場合、以前は取り寄せる必要がありましたが、現在は病棟にあるテレビモニターですぐ見ることができます。
デジタル画像は劣化がなく、時間がたっても画像が悪くなりません。
またフィルムを保管するスペースも要らなくなりましたが、全ての診察室や病棟など多くの場所にテレビモニターを設置する必要があるため費用もいっぱいかかります。
エックス(X)線って何なの?
図を見てください。上記載せてある電波から赤外線、可視光、紫外線、ガンマ線全て電磁波です。
真ん中にある虹色の光が可視光です。右の波長の長いほうが電波で左の波長の細かい方がガンマ線やエックス線です。全て、仲間です。
電磁波は、電場と磁場の変化を伝える波(波動)です。
ぶつかった分子や原子がイオンに分解することを電離と言いますが、電磁波は、電離させる能力のある放射線と電離させる能力を持っていない放射線に分けることができます。
これを電離放射線と非電離放射線と言います。波長の短いガンマ線とエックス線は、電離放射線に分類され、可視光、赤外線、マイクロ波、長波などは、非電離放射線に分類されます。
紫外線は、電離放射線と非電離放射線の境にあるため、紫外線に近いエックス線とエックス線に近い紫外線もありますが分類としては非電離放射線です。
電磁波の種類の図の中でガンマ線が一番左にあり、右隣にエックス線がありますが、ガンマ線とエックス線に差はありません。
それぞれのエネルギーの違いにより強弱が決まります。よってガンマ線とエックス線は同じで、発生方法が違うと理解してください。
なぜ、大きなフィルムで撮らないの?
撮影部位によっては、多くの線量が必要な部位と少ない線量で撮影できる部位があります。
その両方を1枚の大きなフィルムで撮影した場合、以前のアナログ画像では、線量不足の場所と線量が多すぎる場所ができてしまうので、使い物になりません。
現在のデジタル画像では以前のようなことはありませんが、良い画像にはなりません。
広い範囲を撮影する場合は、線量を多く必要とする場所に撮影条件をあわせますので、全体の被ばく線量が増えてしまいます。
頭部と頚部、胸部を同時に撮影する場合、頭部の撮影条件に合わせるため、頚部、胸部では多すぎる線量になります。
写真も頭部の濃度に合わせますので頚部や胸部では黒い写真になってしまいます。
関節の撮影には、体位(身体の向き)とエックス線の照射角度が大切なため一度に広く撮影することができません。
お医者さんが画像を診て診断する場合、骨の間隔や向きによって病気の有る無しを精査しなければならないため、検査法に合わせた撮影が必要となります。
大きなフィルムを使うこともあります。よく言われるのが交通事故後のX線撮影では多少広めに撮影するようにします。
痛い処と骨折部分が離れていることがあり、撮影はしたが骨折部位が入っていなかったそんな経験から先輩にはそのように教わった経験があるよ。
なぜ、部屋に窓がないの?
エックス線は人体に対して良いものではありません。少しでも少なくする必要があります。
検査のための被ばくであれば仕方がないのですが、レントゲン室の隣にいる人やローカを歩いてる一般の人が被ばくしてはいけません。
そのために外部へエックス線が漏れないように、窓を作らず、壁も厚くしています。
もれる(漏洩)線量に対して線量限度の規制が作られています。
操作室に小さな窓がありますがこれは鉛ガラスと言ってエックス線を通さない特殊なガラス窓です。
放射線治療室やアイソトープ検査室も同様に遮蔽やRIの管理はしっかりしています。
みどりさんの質問 高校3年生
このアルミの板は何ですか?
下記のような格子状のものをリスホルムブレンデと言いますが、我々放射線技師はリスと呼んでいます。
手や足などの厚みが少ない部位では使いませんが、頭部、頸椎、胸椎、腹部、腰椎、骨盤など厚みがある部位を撮影する場合、その場所からでる散乱線によって画像が悪くなるため、散乱線を取り除くために使用します。
この板をフィルムの上に置くことで、鮮明な画像になります。このリスの構造を下記に示します。この板には、1cmの間に60本位のスリットが平行に入っています。
体からの散乱線はこのスリットでカットされ、コントラストと鮮鋭度の高い画像を撮ることができます。
リスホルムブレンデにはいろいろな種類があります。上記で説明したリスは平行リスと言いますが、フィルム線管球とフイルムの距離が長い時に使います。
距離が長いとエックス線が平行に入射するため平行なリスを使います。撮影距離が短い場合はリスの両側が少し内側を向いたリスを使います。
そのリスを集束型のリスと言います。リスの厚みや本数を増やすことで画像はきれいになりますが、患者さんの被ばく量が多くなるためそれも難しくなります。
胸部撮影の電圧はどの位ですか?
一般の撮影で一番高い電圧で150kvくらいです。
胸部撮影の場合、電圧120kV位を準高圧150kVを高圧撮影と言います。手足であれば40~50kVくらいで撮影できます。
胸部撮影とは、肺野の撮影を目的としているため肋骨や肩甲骨が邪魔になります。
そこで高圧撮影すると肋骨や肩甲骨が透過して肺野が観察しやすくなります。
子供さんの場合は、厚みも少ないので高圧にする必要はありません。
胸部撮影は、撮影距離を2メートルにしている施設も多いと思います。これは、ボケと拡大を抑えるためです。
管球と撮影部位の距離を長くして、部位とフイルムの距離を短くすることでボケと拡大が押さえられます。
画像のボケは、ターゲット(焦点)の大きさにも関係します。
焦点を小さくすれば、ボケの少ない鮮明な画像ができますが、繰り返し使っていると、すぐに焦点が壊れてしまいます。
そのため、現在では陽極(ターゲット)を独楽のように回転させる回転陽極管球が開発され主流になっています。
胸部撮影は、空気の多く入った肺野を撮影するため、エックス線管球にかかる負荷が少なく2m撮影も問題ありませんが、腹部は負荷が多いため2mでは撮影しません。
① 被写体をフィルムに近づけると拡大率が小さくなります。②-③ 被写体をフィルムに近づけることは、相対的に撮影距離を長くしたことと同じです。
エックス線は、どのように発生させるのですか?
エックス線は、エックス線管球という発生器で発生させます。管球の陽極(+)と陰極(ー)に高電圧をかけ、陰極から電子を飛ばしターゲット(焦点:陽極)に衝突させます。
すると、ターゲットからエックス線が発生します。そのエックス線の強さ(透過力)は、掛ける電圧によって決まります。
手足は低い電圧で充分ですが、腰椎撮影は高い電圧が必要です。先ほど胸部撮影でお話しした150kvとは、この電圧のことを言います。
低い電圧で腰椎を撮影した場合最適な画像は出来ませんし、高い電圧で手足を撮影した場合も最適な画像は出来ません。
発生したエックス線は、一定方向に照射されますが、ある程度の広がりを持っているから、鉛板(絞り)を使って照射範囲を制御して余計な被ばくを減らします。
エックス線の発生効率は悪く、99%以上が熱になりエックス線になるのは1%以下です。
管球の陽極は冷やすために油が入れてあり、これを循環させています。
何回も撮影を続けると管球が熱くなります。以前は水を循環させていました。
・発生するエックス線には、2種類有ります。特製エックス線と制動エックス線です。
特性エックス線は、エックス線管球の陰極から飛ばされた電子が原子内の電子と衝突すると電子を弾き出し、自らも原子外へ飛び出していきます。
空席の場所へ外側のエネルギーの高い電子が入り込んで来て、エネルギーを落として入り込みます。(原子の電子は、原子核に近いほどエネルギーが小さい。)
その時、落としたエネルギー分のX線を発生させます。これを特性エックス線と言います。
特性エックス線のエネルギーは、電子の持つエネルギーの差であるため、不連続なため特性エックス線と言います。固有X線とも言います。
制動エックス線は、エックス線管球の陰極から飛ばされた電子がターゲット金属の原子核近くを通過するとき、その電界により減速や曲げられて失うエネルギー分をエックス線として放出します。
自転車に乗っていて急ブレーキをかけると、かごに入っている荷物が前に飛びそうになりますよね!
これに似てスピードが落ちるとその分のエネルギーをほかに渡します。このエックス線を制動エックス線と言います。
制動X線は連続したエネルギーを持つため、連続エックス線です。この作用を制動放射と言います。
エックス線管球のターゲット付近では、下記のような相互作用が起きています。
被ばくについて教えて下さい。
放射線被ばくとは、人体に当たった放射線が人体に吸収され消滅したり、減速してエネルギーの一部を失い体内に取り込まれることを言います。
それではアルファ線とベータ線、エックス線について確認しょう。ベータ線と電子線は同じです。エックス線とガンマ線は同じです。
エックス線と電子線は人工的に作られた放射線で、アルファ線とベータ線、ガンマ線は放射性同位元素より発生する放射線です。
アルファ線はヘリウムの原子核と同様で重さを持ち、電離作用は強く人体表面で消滅します。
そのため表面の被ばくや体内被ばくによる人体への影響は大きくなります。
ベータ線はアルファ線とエックス線の間にあり、電離作用はアルファ線より弱くエックス線より強い、反面透過力はアルファ線より強くエックス線より弱いのです。
エックス線は重さを持たない放射線で、透過力は強いが電離作用は弱い放射線です。
人体への影響が少なく透過力の強いエックス線は写真を撮るのに都合のよい放射線です。
放射線には被ばくの観点から放射線が人体に与える影響を表す放射線荷重係数を決めております。
エックス線、ガンマ線、電子線、ベータ線は1としています。アルファ線はその20倍の20としています。
詳しくは下記のボタンの放射線荷重係数で確認してください。
一般撮影でのエックス線被ばくの場合、成人では、問題が起きることはありませんが、妊婦さんへの被ばくは避けるべきですし、子供さんの体幹部への被ばくの場合、回数を減らすようにしたほうがよいでしょう。
電子と物質の相互作用では、制動X線(制動放射)と特性エックス線(固有エックス線)とお話ししましたがエックス線と物質の相互作用は光電効果、コンプトン効果、電子対生成の3種類が中心です。
医療で使うエックス線の多くは光電効果とコンプトン効果です。
上記のように電子とエックス線を分けましたが、実際はエックス線が発生したら、電子線も発生しますし電子線が発生したらエックス線も発生するためすべて同時に起こります。
最後に
一般撮影は一般の人に身近な放射線です。健康診断等で使われる放射線も一般撮影と同じレベルの放射線です。
一般撮影での放射線被ばくは、CTやエックス線テレビ検査に比べれば、少ない線量です。一般撮影ではエックス線以外の放射線を使用することはありません。